心に悪夢を潜ませ

ーーー

 その夜だった。

 ルヒルの呼吸が激しく乱れたのは。

 どんな魔術も意味はなく、ただ汗を拭いたり、氷枕を替え水を飲ますだけの存在だった。

 一人ではお医者様を呼びに行く時間も惜しかった。

 「ルヒル、ルヒル」

 呼びかけに反応し、薄目を開けるルヒルの荒い呼吸音に胸が傷んだ。

 「何もひてあげられなくてごめんね。ダメなお姉ちゃんでごめんね」

 守れなくて

 助けてあげられなくて

 ごめんなさい。

 「大好きよ、ルヒル。ずっとずっと」

 たとえ、この世から

 いなくなろうとも…変わらずずっと。。

 「痛い?苦しい?熱い?寒い?何処が苦しい?」

 かわってあげたい 

 かわれない

 それが苦しいよ。

 「ありがとう、沢山の思い出をありがとう」

 ありがとう

 生まれてきてくれて。

 ありがとう、

 私の弟でいてくれて。


 

 
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