心に悪夢を潜ませ

 髪が頬に張り付き、涙が床を濡らした。

 咎め、睨んだ視線の先には、厳しい顔のお医者様がいた。

 「魔術は手段だ、シャンス。ルヒルの命が後少しだと思うならどうして魔術(手段)にばかり頼り、まだ命のあるルヒルと向き合わない。彼が一度でも治してくれと望んだのか?ルヒルを諦めるなよシャンス」

 「綺麗事です、それは!確かに、私の魔術はまだ未熟です。向上などうかがえずルヒルの状態は回復していない。悪戯に体力をすり減らすだけの魔術(まやかし)行為かもしれない…ですが…でも!なにかしたい、なんでもいいんです!私に出来る事なら、なんでもいい…そう願ってはいけませんか?そう思ってはいけませんか?奇跡に縋ることは罪ですか、お医者様!」

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