【壁ドン企画】密楽遊戯
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あれから一週間。
そんなやり取りがあったことすら忘れてたし、遊佐がシャワー浴びている間にネットサーフィンしていたら『今全女子が虜!壁ドン特集』なんて記事を見つけちゃったもんだから、いやはやどんなものかと興味を持ったってだけのことだった。
結局あいつはしてくれなかったし、翌日彼氏に同じことを頼んでやってもらったけど、正直なにがいいのか分からず終いだった。
嫌だ嫌だと嘆いても働かなくては食べて行けないのが社会人ってやつで、高いピンヒールの拷問に耐えながら、今日も今日とて仕事をする。
社長の第二秘書、つまりは第一秘書の補佐業務をしている私は、午後からの開かれる打ち合わせのため、応接間にて最終確認を行っていた。
ーーーと。
「笠原(かさはら)」
背後から私の名を呼ぶ声が聞こえ振り向くと、なぜか応接間に入ってきていた遊佐がいた。
「なぁに?今本当に仕事中だから下らない絡みなら、」
また今度にして、と言いたかったのに上から重なってきた影に言葉を失う。
目の前にあるガラス製の資料棚に右手をつき、上から顔を覗き込んでくる。
「え、なに…どうしたの」
私の問いに答える素振りもなく、ただにやにやと微笑を浮かべ距離を詰めてくる。
逃げようにも左側には壁、右にはこいつの手がありまさに八方塞がりだ。