【壁ドン企画】密楽遊戯
“遊佐”
部屋を出て行こうとドアノブに手をかけた彼を呼び止める。
「ーーっ!」
彼の行動を抑えるように、ドアノブの少し上に手をつく。
上質だけど、少しの遊び心が入った遊佐らしいネクタイを引っ掴み、彼の唇に自分のそれを今度は私から重ねる。
身長差が逆だから、壁ドンというには恰好がつかないけれど。
まさに豆鉄砲を食らった鳩のような驚いた顔をして、キスに応えるのも忘れてしまっている。
うん。なかなか悪くない光景だ。
やられっぱなしだなんて、私をなめないでよ。
「笠原、今晩空けとけ」
「今日彼氏と会う約束してるんだけど」
「知るか。今じゃなくて終業後まで待ってやるって言ってんだから、むしろ感謝しろ」
ええええ、なにその理屈。
しょうがないなぁ、彼氏よりも親友を優先するなんて私のポリシーに反するけど、まぁ今夜はこっちの方が面白そうだし。
“今日はあの趣味の悪い部屋、勘弁してよー?”
ひらひらと背中越しに手を振ると、分かってるとでもいうようにドアが閉まる音がした。
さて、おたのしみまで働きますか。