重い想われ 降り振られ
「嵐の晩に駅の傍で、あんたと橘を見かけたんだよ。あぁそうか・・・。
それで最近菜奈ちゃんと一緒に食堂来なくなったのか?」

橘と菜奈の噂は社内でかなり広まっている。

松田の耳にも噂の事は届いているだろう。

「心配すんなって。橘はたぶん、あんたの事が気になってるみたいだし。
それに俺は、菜奈ちゃんが好きだしな。」

「橘さんは・・・たぶん、私の事をからかって遊んでるだけだと思います。
あんな人が私みたいな女に、本気になるハズないじゃないですか。」

真理子は自分で言って、自分で胸を苦しめた。

「あんたさぁ。小林を本気にさせたんだろ?橘は本気じゃないなんて何で言えんの?
あいつら二人って真逆の性格だけど、いい加減な奴等じゃないぜ。
橘は女友達多いけど、ちゃんと一線引いてる。相手が本気の場合は手を出さない。
そんな奴が自分から女に声を掛けるなんて、今までには無かった事だ。」

「それでも・・・。」

言いかけて真理子は言葉を止めた。

「俺も菜奈ちゃんには本気なんだけどなぁ。すでに12連敗だわ。」
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