重い想われ 降り振られ
タクシーが思うように捕まらない。

焦る橘の前に、一台のバイクが停まった。

「橘じゃん。何してんの?」

メットのバイザーを上げ、松田が声を掛けた。

橘はすぐに松田を引きずり下し、バイクを貸すように言う。

「えぇー!貸すのは駄目。これに幾らかかったと思ってんの。」

「緊急事態だ。ちゃんと返すから貸せ!」

蒼白の顔をした橘に、松田はシートの下のボックスから予備のメットを取り出し
橘に渡した。

「貸すのは駄目だけど、乗せてやる。」

橘はメットを松田から受け取り、携帯にイヤホンマイクを差しメットを被った。

松田の後ろに跨り、バイクはすぐに走り出した。

「今朝寝坊して、バイクで来てて正解だったな。」

松田は運転しながら、橘に大声で言った。

県道を南下しつつ、携帯からの遠藤の案内で追いかける。

松田のバイクは心地よいエンジン音を響かせ、街を走り抜けた。
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