重い想われ 降り振られ
ぐっすりと眠りこけてる真理子をおぶったまま、小林は部屋の鍵を開けた。

部屋に入り暗い寝室に真理子を運び、上着を脱がせた。

真理子の眼鏡を慎重に外し、サイドテーブルに置く。

後頭部できっちりまとめられている髪をほどく。

真理子が人に自慢できる事があるなら、間違いなく長く伸ばした髪だろう。

だけど誰にも教えたくない、真理子だけの秘密だった。

それが今、小林の手で解かれてしまう。

サラサラと音が響きわたりそうなほどの静けさの中で、
カーテンの隙間から零れる月明かりが、真理子を照らしだす。

小林は思わず息を飲んだ。

『やっぱり、思ってたとおりだったよ』

小林は自分のベットに、そっと真理子を寝かせた。

眠っている真理子をじっと見つめ、優しく髪をなでる。

吸い寄せられるかのように、小林は顔を近づけた。

唇が触れるか触れないか、というくらい近い距離。

そして小林は寝室を出た。
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