重い想われ 降り振られ
ぐったりする真理子を抱えながら、橘は自分自身に苛立っていた。

数分で病院に着くと、玄関を開けて待っていてくれた看護婦さんの手を借り
真理子をストレッチャーに乗せた。

そのまま真理子は処置室に運ばれていった。

暗い待合室で待ちながら、橘は自分がしてきた事を振り返っていた。

自分がやってきた軽率な判断や行動によって、真理子を巻き込んでしまった事。

今は人を好きになる気持ちが解るため、遙香達の行った事にも理解できる。

無償の好意は無償では無く、彼女達一人一人が橘を想って、
いつしかその気持ちが橘に通じる日を願い、積み重ねてきた努力なのだ。

橘はそんな事に気付きもせず、気軽に好意を受け続けてきた結果がこれなのだ。

怒りの矛先が無く、どうする事も出来ない歯痒さに苦しんだ。

そうとう酷い顔をしていたのだろう、橘を見て看護婦が声をかけた。

「大丈夫ですか?アタナもどこか怪我とかしてない?」

「俺は平気です。どこも怪我してませんから。」

慌てて丁寧に頭を下げた。

「彼女さんの処置、終わりましたよ。」
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