重い想われ 降り振られ
にこにこと笑顔で訪れた小林は、橘の顔を見て言った。

「なはははは・・・お腹すいてるんじゃないですかね!
お腹すくと、人は不機嫌になるって言うし・・・。」

真理子は慌ててフォローする。

「あっ!香田さん着替え取りに自宅に戻ったの?」

真理子の服装を見て、小林は訊ねた。

不機嫌な橘を無視し小林は真理子に駆け寄ると、上着の胸ポケットから
眼鏡ケースを取りだし、中身を取り出した。

ピンク色の細いハーフフレームの眼鏡を見せ、真理子の顔に掛けた。

「眼鏡壊れちゃってたから、直してもらおうと思ったんだけど
せっかくなんで、新しいの買っちゃったんだ。すごく似合うよ。」

リビングの大きな窓ガラスに反射して、真理子の姿が映し出される。

「後で髪も揃えてあげるからね。」

小林がキッチンに移動した隙にそっと振り返ると、橘が不服そうに
「似合うんじゃねぇの。」
と答えた。
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