重い想われ 降り振られ
小林が調理を始め、橘が手伝のためにキッチンに入った。

カウンター越しに二人がキッチンに立っている姿を眺めながら、
真理子はダイニングテーブルのイスに移った。

以外にも、橘は文句も言わずに野菜を洗ったり、使用した調理器具を洗ったり、
皿を並べたりして、小林の邪魔にならない範囲でちゃんと手伝いをしていた。

「橘さんって、ちゃんと調理の手伝いできるんですね。」

何気に思った事をそのまま口にして、真理子は『しまった!』と後悔した。

橘の頭に、怒りのマークが見えた気がした。

小林は「あはははは。」と思いっきり爆笑した。

笑いすぎて涙目になりながら、小林は言った。

「違うんだよ香田さん。僕は少し前までは頻繁にここに遊びに来てて、
泊まる事も多かったから、橘にご飯作るのも珍しくなくてね。
最初の頃は手伝いなんてまったくしてくれなかったんだけど、
僕が手伝えって怒ったんだよ。それから僕がいろいろ教え込んだんだ。」

小林の隣で橘が顔を引きつらせて、真理子に声を出さず何かを言った。

口の動きで何となくだが“あとでおぼえてろよ!”と言ったみたいだった。
< 156 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop