重い想われ 降り振られ
菜奈は小さな声で言った。

二人はベランダのイスに座り、再び夜の街を眺める。

「子供の事考えると、やっぱり一人より二人の方がいいに決まってるし・・・。
松田さん言ったんだ。ここからやり直せばいいって。言われて思ったんだけど、
私松田さんの事、今までちゃんと見てなかったなって。あんな事の直後なのに
あの人、迷わず産んでほしいって言ったの。だから、ここからスタートでも
いいかなって思った。」

菜奈がにっこりと笑った。

真理子も笑顔を返し、頷いた。

菜奈に向き直り、真理子も話しだす。

「私も自分の本当の気持ちに気付いたの。だけど認めるのが怖かった。
何もかもが壊れて消えてしまいそうで、それなら今のままがいいんだって
思い込んでいたんだよね。それに何よりも、自分が傷つくのが怖かった。
でももっと早くに、気付いた時に菜奈ちゃんには伝えないといけなかった。」

生暖かい風が、二人の間をすり抜けて行く。

「私は橘さんが好きです。」
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