重い想われ 降り振られ
真理子自身も残業で、橘とは時間がまったく合わずにいた。

『あの時橘さんが言ったように、同棲していればよかったかも・・・』

真理子は暗くなった駅への道を歩きながら思っていた。

街灯に照らされている街路樹は、すでに赤や黄色に染まりかけていた。

「香田さん!」

突然真理子の背後から声を掛けられた。

振り返ると、小林が手を振っている。

前に小林が真理子を連れてきた洋食屋の前だった。

小林が真理子の傍まで駆け寄る。

「今帰るとこ?」

真理子は「おつかれさまです。」と声を掛け、今から帰るところだったと告げた。

「僕も今日はもう帰るところ。駅まで一緒していいかな?」

真理子は頷き、小林の隣を歩いた。

「怪我はもう良くなった?」

「はい。おかげさまで、もう全然平気です。ずっと忙しかったから、
気付いたら治ってたって感じでした。」
< 171 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop