重い想われ 降り振られ
深夜のホテルの駐車場で、橘は小林の車の横に自分の車を停車させた。

辺りを見回すと、駐車場前の道路を挟んだ向かい側、砂浜に降りる階段の前で
小林が手を上げた。

橘が小林から電話を受けた時は慌てたが、今小林は一人で外にいた。

“今僕の腕の中で香田さんが眠っている。早くこないとこのまま・・・。”
と小林は電話口で言い、場所を告げた後、切られた。

橘はすぐに車を出し、制限速度など構わず猛スピードでここまで来たのだった。

「お前は俺を事故らせたいのか?」

橘が文句を言うと、小林は笑って答えた。

「それぐらいされたってしょうがないでしょ、橘は。」

二人は砂浜に降り立ち、海を眺めた。

「あいつは?」

橘が真理子の事を尋ねると、小林は「部屋で眠ってるよ。」と答えた。

「言っておくけど、僕は完全に振られたわけじゃないからね!」

小林が海に向かって声を上げた。

橘は驚いて小林の方に振り向く。
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