重い想われ 降り振られ
強い海風に髪が暴れる。

小林も橘に振り返り
「香田さんは僕の事、今でも大好きだって言ってたし。」
と笑う。

「だから僕はこれからも香田さんに何かあれば、橘から奪い去る事だって
有り得るんだからね!」

橘もニヤリと笑って言い放つ。

「そんな事させるかよ。」

小林が右手を上げると、橘も右手を上げた。

パチンと二人の手の平が合わさり、ぎゅっと握りしめあった。

小林はそのまま自分の車に戻り、一人で帰っていった。

橘がホテルの部屋に入ると、真理子はぐっすりとベットの中で眠っていた。

備え付けの小型の冷蔵庫から缶ビールを一本取り出し、
窓際のテーブルセットのイスに座った。

静かな夜に響く波の音が、橘の耳にも届いた。

ホテル前の道路には行き交う車も少なく、街灯だけが点々と灯っていた。
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