重い想われ 降り振られ
静かな病室で、真理子は橘の冷たい手を握った。

ぽろぽろと涙が止まらない。

眠っているはずの橘が目を開け、真理子の涙を指でぬぐった。

驚いた真理子は橘の顔を見る。

うっすら開いた瞳が、真理子を見つめていた。

「泣くなよ。」

冷たい橘の指が、真理子の頬を撫でた。

「泣くな・・・。」

再び橘の低い声が聞こえる。

橘に言われて、再び真理子の瞳から涙が溢れた。

頬に触れている橘の手を包み、真理子はぎゅっと握った。

「泣いてばっかりだな・・・お前。」

橘がにっこりと笑った。

「橘さんのせいですよ。」

止まらない涙の影で、真理子は笑って見せた。

真理子の笑顔を見て安心したのか、橘は再び眠りに落ちた。
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