重い想われ 降り振られ
歩く真理子の頭には、橘の顔が過ぎる。

橘と初めて会話をしたのは嵐の夜。

駅でずぶ濡れになった真理子に声を掛けてきた時だった。

熱を出して倒れた真理子を一晩看病したり、小林とのデートにキレて大暴れしたり、
橘と出会ってからの約半年間を真理子は振り返っていた。

橘の家にいた数日間は、本当に幸せだったと感じていた。

橘の怒った顔や悲しむ顔、笑った顔や困った顔、全てが愛おしく感じていた。

二人で過ごした幸せな時間は短かったが、真理子には一生分の幸せが詰まった
大事な時間だったと思った。

真理子はアパートまでの帰り道を、一人で歩きながら決断していた。
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