重い想われ 降り振られ
真理子はずっと知らずにいたのだが、蒸発した父親が消える前に
社長から借金をしていた。

社長と真理子の父親は同級生の間柄だったため、社長は承諾したのだそうだ。

その事を母親も知らず、父の蒸発後女将から母も聞いたそうだ。

母は真理子には何も話さず、仕事をしながら返済をしていたのだった。

女将が真理子や母親に厳しく、冷たい態度を取る理由もそこにあったのだ。

真理子は、実家に戻ってきてよかったと心から思った。

女将の意向で母と同じシフトになる事が無く、2交代制なため、
母とはすれ違いゆっくり話す事は少なかったが、それでも母の愛情を感じ
真理子は耐える事ができていた。

色ずく山の合間に沈む太陽は、この時期より一層赤く美しかった。

宿泊客の食事の準備に追われながら、真理子は旅館の廊下を早足で駆け抜けた。

「おい!」

突然影から飛び出した男に呼び止められる。

「ちょっと出かけてくるから、ババァに晩飯いらねぇって伝えといて。」

いきなり出てきたのは、この旅館の一人息子の藤沢 幸治だった。
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