重い想われ 降り振られ
食事の準備が終わると数人の仲居を残して、他の仲居達は
客室に布団の準備をして回る。

テーブルを隅に寄せ、布団を敷いて回るのだ。

この仕事が仲居にとってはかなりの重労働だった。

客室の多い大手旅館などは、布団敷き専用のバイトを別で雇っていたりするのだが
真理子の務める旅館は、それほど客室は多くないために仲居がこなす。

制服が着物のために動きづらく、客が不在の間に部屋に入るために緊張もする。

真理子にとっても、この仕事が一番苦手だった。

布団敷きが終わり、食事の片づけの手伝いに厨房に向かう真理子に
女将が声を掛けた。

「真理子さん、片づけが終わったら社長室に来なさい。」

真理子は「はい。」と返事をしたものの、何かお客に粗相をしたのではないかと
不安になった。

ここに努め始めて、社長室に呼ばれる事など一度も無かった。

厨房室前から繋がる渡り廊下を奥に進むと、社長や女将達が暮らす
住居に繋がっていた。
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