重い想われ 降り振られ
真理子は立ち上がり答えた。

「少し考えさせて下さい。」

社長は頷いて言葉を続ける。

「そうじゃな。少し時間は必要だろう。とりあえずお前は、
来週の月曜は休暇にした。その日うちの旅館の一部屋を貸し切ってある。
そこで息子の幸治本人と話し合って、返事をしなさい。」

その晩、真理子が帰宅すると母が起きて待っていた。

「あんた、今日社長に呼び出されたんでしょ?」

真理子の顔を見るなり、母は駆け寄ってきた。

「借金の事なんて気にしないでいいのよ。あんな男と結婚なんてしちゃ駄目。
お金は返済していけばいいのよ。」

母は真理子に必死に訴え掛けた。

小さな母の荒れた手を見ながら、真理子は頷く。

母親が必死に反対する気持ちはよく分かっていた。

幸治の良い噂など、一度も聞いた事は無い。

そもそも幸治は、本当に真理子に好意を抱いているようには見えなかった。
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