重い想われ 降り振られ
聞いた話によれば、社長と女将に言われ何度も見合いをしていたはずだった。

有名旅館の孫娘や高級ホテルの娘といった、育ちの良い令嬢ばかりと
見合いを繰り返していたと言うではないか。

だが、全ての女性達に断られ続けていたとも聞く。

自室に籠もり、真理子は使わなくなった古い携帯を取り出した。

電源を入れると画面が明るく灯り、ピピっと音が鳴る。

メールフォルダを開き、最後に受信したメールを表示させた。

“会いたい。”

たった一言、橘からのメールだ。

実家に向かう電車の中で、真理子は橘からの最後のメールを受け取った。

心が引き裂かれるかのように痛んだ。

もう二度とあの腕の中には戻れないと、真理子は覚悟して帰ってきた。

「橘さん・・・。」

暗い部屋の中で、真理子は呟いた。
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