重い想われ 降り振られ
仕事を終えた菜奈は、真理子の見舞いにアパートに向かった。

そこで目にする。

真理子の部屋から出てきたのは橘だった。

何故か、反射的に身を隠す菜奈。

橘も会社帰りのようで、スーツ姿のままだった。

真理子の部屋の前で、閉めた扉を少しの間だけ見つめ、アパートから出て行った。

『なんで橘さんが、一人で真理ちゃんの部屋に?』

茫然とその場に立ち尽くす。

『橘さん、もしかして真理ちゃんの事・・・。』

菜奈は違うと否定したかった。

だが真理子の部屋の扉を見つめていた時の橘の表情が、
見たこともないほど切なげで、ショックを受けた。

沢山の女性と関係を持ちながら、特定の女性を作らないはずのあの橘が
今、恋をしているのかもしれない。

しかも相手が真理子だと言う事に、菜奈は気付いてしまった。

真理子には会わず、菜奈はそのまま帰宅した。
< 53 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop