重い想われ 降り振られ
「結構早く会社出れたんだな。」

橘が遠藤に気が付き、声を掛けた。

「今はそんなに忙しくないからね。にしても橘の家は、いつ来ても贅沢だよな。」

橘はキッチンの冷蔵庫からビールを取りだし、遠藤に渡す。

キッチンで調理後の片づけをしていた恵子にも、声を掛ける。

「いつも悪いな。今夜は遠藤と二人で飲むから・・・。」

橘が言い切る前に、恵子は「いいのいいの。」と笑顔で言葉を遮った。

「私はこれから両親と食事に行く予定があるから、片づけ終わったら帰るよ。」

ささっと片づけを終え、恵子は鞄を持つと遠藤に声を掛ける。

「今度また、時間あるときにでも一緒に飲もうね。」

「ごめんね。気をつけて帰るんだよ。」

パタンと玄関の扉の閉まる音がして、室内が静まる。

橘も遠藤の向かい側に座り、ビールの缶を開けた。

ごくごく と喉を鳴らし、冷たいビールで乾きを潤した後、
恵子の料理に箸を付けた。

「聞きたいのは、今日の“アレ”だろ?」
< 61 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop