重い想われ 降り振られ
業務終了時刻。

各々仕事に区切りがついた者から、貸し切った安居酒屋の2階に移動した。

座敷に並んでいるテーブルに部署ごとに座る。

真理子は興奮気味の菜奈を抑えつつ、周りを見回す。

すでにタバコや料理の匂いが充満し、あちこちで賑やかに声が上がっている。

真理子のテーブルでも飲み物が行き渡り、盛大にグラスを合わせ
皆、仕事上がりの一杯を味わい始めた。

「あれ?真理ちゃん、もしかしてお酒飲めない系?」

なかなか空かない真理子のグラスを見て、菜奈が声をかけてきた。

「あはは・・・ばれちゃった?実は飲むの初めてだったり・・・。」

学生時代はバイトと学業に専念することでいっぱいで、
他人との関わりを避けていたため、真理子にはお酒を飲む機会がなかった・・・

と言うのは建て前で、本音は人前でお酒を飲む自信が無かっただけだ。

誘われても勇気が無く、ずっと断り続けてきたのだ。

社会人になった以上は、やはり避けて通れない道なのだろう。

そう覚悟してきた真理子だったが、初めてのビールの苦味に少し苦戦していた。
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