重い想われ 降り振られ
降り続く雨の音に、早く目が覚めた朝。

真理子はいつもより早く家を出た。

駅の改札を出て、会社に向かう。

傘に当たる雨は、昨日よりも少し強めだ。

濡れたアスファルトから嫌な臭いがし、気温のせいで空気が重い。

先を急ぎ早足で横断歩道を渡りきると、見覚えのある後ろ姿が目に入る。

赤い花柄の傘をさして、2メートルほど先を歩いているのは菜奈だった。

隣を歩くのは、橘。

真理子は歩く速度を落とし、二人から距離をとった。

『あぁ、そっか。』

真理子は嬉しそうに橘に話かけている菜奈を見て、納得した。

『菜奈ちゃんがいつも早目に出社する理由は、これだったんだ。』

橘の出社時間に合わせて、いつも早く家を出ているのだろう。

真理子はいつもの時間に家を出なかった事を、後悔しはじめていた。

用も無いのに会社傍のコンビニに寄り、出社時間を遅らせた。

このまま橘と菜奈の仲が良くなれば、真理子は忘れられると思った。
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