重い想われ 降り振られ
灯りの無い道
真理子は橘を自然と避けていた。

昼はお弁当を持参し、食堂には行かずにデスクで一人で食べた。

朝はお遅めに出社し、鉢合わせしないようにした。

社内でも橘の姿を見かければ、姿を隠し気付かれないようにしていた。

携帯には橘から毎日一回は着信が入っているが、出ないでいた。

橘を避ける事で、真理子の気持ちには平穏が戻りつつあるのだが、
菜奈が時々橘の話をする。

“先週は橘と二人で飲みに行った”とか“橘の家に行った”とか。

そのたびに真理子の心はキリキリと痛んだ。

携帯の着信を見る度に、ぎゅっと苦しくなった。

小林からは二度目のデートに誘われているが、真理子はどうしても受ける気に
ならなかった。

このまま何も無かった事になればいいと、真理子は心から願った。

夏がゆっくりと過ぎ去ろうとしている。

暑く苦しい夏は、真理子にはひどくニガテな季節だった。

じっとりと汗をかきながら、真理子は残業で深夜の倉庫に居た。
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