重い想われ 降り振られ
「ひゃぁ。」

小さく悲鳴をあげ、倒れた背中に冷たい床の感触が伝わる。

「香田さん?」

真理子の目の前に、誰かが居た。

「ごめん。大丈夫?怪我は無い?」

「小林さん?どうしてこんな所に・・・?」

声の主は小林だった。

ぶつかった拍子に、真理子の上に倒れてしまったらしい。

「いやぁ、帰るところだったんだけど、いきなり停電になったから。
そういえば香田さんも残業してたなぁって思って、一旦二課に戻ったんだけど、
香田さん居ないし、会議室とかコピー室とか見て回っても居ないし・・・。
心配で探したよ。でも探しに来てよかったよ。」

小林はぎゅっと真理子を抱きしめた。

「わっ・・・私は平気です。怪我もしてないです。」

小林の腕の中で、どきどきしてしまう真理子。

「本当によかった。こんな地下じゃあ心細かったでしょ。」

抱きしめている小林の首筋や額は、汗でびっしょり濡れていた。
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