重い想われ 降り振られ
守衛さんのいる裏口まで来て、小林は何か思い出したらしく立ち止まった。

「この様子だと、電車も無理かな?」

降りしきる雨を見ながら、真理子も同じ事を思った。

「タクシー、時間かかるだろうけど呼ぶね。ここでなら待ってられるし。」

小林は携帯を取りだし、電話を掛けた。

警備員室に守衛さんの姿は無く、真っ暗な室内がガラス越しに見えた。

停電が回復しないため、社内を見回っているのだろう。

電話をかけ終え小林が真理子の側に戻ってくると、
鞄からペットボトルに入った飲料水を出し、真理子に差し出した。

「30分ほどで来てくれるみたい。喉乾いたでしょ?
ちょっとぬるくなっちゃったけど、よかったら・・・。」

「いえ、私は自分のお茶があるから大丈夫です。
それよりも小林さんが飲んでください。なんだか色々と迷惑かけちゃって・・・。
心配までしてもらって・・・。本当にすみませんでした。」

真理子が謝ると、小林は笑って答えた。

「いいんだよ。こんな事ぐらいで、迷惑になんてなってないから。」
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