拾った子犬(系男子)は身元不明
「オレは、見ず知らずのオレをほっておけなくて、声かけて、同情して泊めて、ご飯も出しちゃう、お人好しの千夏さん、可愛いと思いますよ。」


自分より綺麗な顔に可愛いと言われて、お世辞だとわかっていても照れくさい。


「ありがとう。

 お世辞でも、嬉しいよ。

 泊めたお礼として受け取っておく。」


恥ずかしくなって、それを誤摩化す様に戯けて言うと、


「お世辞やないです。

 今日が、受験やなかったら、一日かけてお礼したいくらいです。」


「へ?」


一日かけてお礼ってどう言う意味だろう?


意図がわからず、夏樹君を見ると、夏樹君は未成年とは思えないほど色気を醸し出しながら、にっこりと微笑んだ。


不思議寝癖は揺れているけど。


不思議寝癖に意識を集中させないと、彼の色気にクラクラしてしまいそうになる。


「オレ、絶対に合格してみせます。やから、その時はお礼させてくださいね?」


どんなお礼だ?そうは思ったが、にっこりと微笑む夏樹君に、私はコクコクと無言で頷いた。



「ほら、もう着替えないと!」


何だかいたたまれなくなって、夏樹君をせかした。


「はーい。洗面台借りますね。」


彼は、自分の鞄をごそごそあさって、風呂場の方に行った。


しばらくして出て来た彼を見て、頭を鈍器で殴られた気がした。


夏樹君は、明らかに高校生とわかるブレザー姿で出て来たのだ。


未成年。頭ではそうわかっていたはずなのに、改めて突きつけられた現実に狼狽える。


そんな私の視線を感じたのは、夏樹君は気まずそうに


「そんな、見んといてください。」


と言った。
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