拾った子犬(系男子)は身元不明
「座って」


こたつのスイッチを入れる。


「あ、はい。お邪魔します。

あ、これ、大したもんじゃないですけど。」


小さな紙袋をくれた。


中を見ようとして、夏樹君に止められる。


「あ、あの恥ずかしいんで、俺が帰って見てくれますか?」



恥ずかしいものってなんだ?そうは思ったけど、夏樹君が赤い顔で言うので、


「わかった。」


と言って、紙袋は置いておく事にした。



私は、夏樹君を横目で見ながら、お茶の準備する。


あれから1ヶ月以上経ち、高校を卒業した彼は、髪の毛が真っ黒ではなくなっていた。


それが、彼の子犬度を上げている気もするが、似合っていないかと聞かれると、もの凄いに合っていると思う。


「熱いから気をつけて。」


彼の前にマグカップを置くと、


「ありがとうございます。」


と彼はペコッと頭を下げた。


私は彼の前に座る。


真っ正面から見る顔はやっぱりイケメンだった。


「で、何がどうなってるのか聞いても良い?」


私がストレートに聞くと、夏樹君が答えてくれた。


「実は、俺の従兄弟の部屋は、この部屋の隣やなくて、1階下やったんです。」


「へ?」


予想外の事実に、間抜けな声が出てしまった。


「ここ403号室ですよね?」


「う、うん。」


「にーちゃんの部屋は402やなくて、302やったんです。」


「・・・・・」


「俺、ちょうど、このマンション着いた時にスマホの電池が切れて、部屋の番号が間違ってるんに気づかへんかったんです。」



「じゃあ、従兄弟さんは、あの日ちゃんと部屋に居たってこと?」



「いや、すっかり忘れて、彼女のとこにおったみたいです・・・」


「・・・・・なんじゃそりゃ。」


思わずツッコんでしまった。
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