拾った子犬(系男子)は身元不明
「ホンマ笑うてしまいますよね?」


夏樹君が苦笑しながら言った。


「ちょっと俺の話、聞いてくれますか?」


真剣な顔で言われ、私は頷いた。


「俺の実家は、定食屋なんです。俺も小さい時から手伝ったりして、みんな俺が後を継ぐって信じてたんです。

 実際、俺も思おてましたし。

 でも、俺、中学の時にサグラダファミリアをテレビで見て、すっごい感動して。それから色んな建築物にハマって。写真集とか買ったりして・・・


 そのうち、人を感動させたり、安心させる建物を俺も建ててみたいって思う様になりました。


 やから、定食屋やなくて、大学に行って勉強したい。っておとんとおかんに言うたんです。

 その時の俺は、反対されると思ってすごい意気込んで言うたんですけど。

 おとんもおかんもあっさり、『えぇよ』って言うたんです。俺拍子抜けで。おとんもおかんも、別に俺に定食屋についで欲しかったわけやなかったんやな。って。



 でも、それも違ったんです。

 おとんもおかんも、ホンマは俺に定食屋継いで欲しかったけど、俺が他にやりたいことがあるならって、それを俺には言わんかったんです。
 
 だから、俺、やるなら真剣にやろうって。

 おとんもおかんも何も言わんと俺を応援してくれるなら、二人の期待には応えられへんかったけど、二人の応援には応えようって。」



そこまで一気に言って、夏樹君はお茶を飲んだ。
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