拾った子犬(系男子)は身元不明
「わかってるよ・・・」


「俺が、男やってわかってて抱きついてるってことですか?」


男とわかってて抱きついてる、確かにそうなのだが、そう言われると違う気する。


「・・・・・」


「俺、大学に真面目に勉強しに行こうと思ってたんですよ。

 千夏さんから見れば、ガキかも知れませんけど、けっこうモテたんです。」


それは、言われなくてもわかる。


そう言ってやりたいのに、なぜか声は出ない。


「でも、大学は必死で勉強しようと思ってました。遊ばんと、バイトして生活費稼いで、勉強を死ぬ気でやろうって。

 なのに、あなたが、千夏さんが現れたから、俺の大学生活の予定が狂ってしまいそうです。」


そう言って、私をそっと放した。


夏樹君から離れると、今度は、その目にとらわれる。


「千夏さん、この間のお礼、ちょっと待ってもらえませんか?」


「え?」


「俺、自分で稼いだ金であなたにお礼がしたいんです。

 稼いだって言っても、バイトでになりますけど。自己満足な気もするんですけど、そうしたいんです。
 
 ええですか?」


真っ直ぐな見つめられながら言われると、どうしたら良いのかわからなくなる。
< 20 / 24 >

この作品をシェア

pagetop