拾った子犬(系男子)は身元不明
「私は、別にお礼なんていいのに・・・」


「それじゃあ、俺の気がすまないんです!!

 大学に慣れてからになるから、ちょっと時間はかかるけど、必ずお礼しますから、待ってて下さい。」


真剣に見つめられて、もう逃げられなくなってしまった。


「わかった。」


「連絡先、教えてもらってもいいですか?」


「あぁ、もう玄関で待つのは飽きたもんね。」


「・・・意地悪。」


やっぱり、拗ねた顔にきゅんとした。


連絡先の交換が終わると、


「俺、もう帰りますね。」


夏樹君が、立ち上がりながら言った。


「え?もう帰るの?」


思わず言ってしまった。


「はい。明日、入学式なんです。それに千夏さんは仕事でしょ??」


「そっか、明日、入学式か。大学生活、頑張ってね!」


そう言う、私の顔を夏樹君が真顔で見つめる。


「な、何?」


何事かと狼狽える私に、夏樹君が


「千夏さん、俺がお礼に来ると思ってませんでしたよね?」


と言って来た。


「・・・・」


どっちとも言えないので、黙っていると


「さっきのお礼の約束やって、どうせ大学生活が始まったら、忘れるとか思ってませんか?」


「そ、そんなことないよ。」
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