オトシモノ

まぶしい顔


「おまえさ、本気になれよ」

急に言われたから

急に言われたから、びっくりした


バスケ部の練習の最中のこと

うちの学校では男子も女子も区別なく
いっしょに練習してる

試合形式で行うメニューがあって
その休憩のときに話してたのが翔 [カケル]


さっきまで笑顔でしゃべってたやつが
いきなり真面目な顔でそう言うんだ

「な、なに?」

「おまえ、いつも遠慮してるだろ。
先輩相手だからって遠慮したりすんなよ。うまくいかないのは思い切りが足りないからだと思う。」

「…うん。」

「ひとつひとつの技の練習のときは、おまえすげぇ上手いんだぜ?
だけど試合形式になると、途端に勢いがなくなってる。」

「…うん。」

すごく真面目な、なんていうか、真剣な顔だった

あたしのこと、そんなにちゃんと見てくれてたんだね

あたし、まっすぐ翔の顔みれなかった

その顔はあたしが見るにはまぶしすぎたんだ

「うん」しか言えないあたしが情けなくて
遠慮してるあたしが情けなくて
涙を必死にこらえてた

そのうち翔はコートの中にはいっていった


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