アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
短編集
獣、舌なめずり
世の中見た目が9割とは、残酷すぎる真実だと思う。
今、数年ぶりに会った2つ下の幼馴染のあゆむ君を見て、私はつくづくそのことを実感していた。
あゆむ君はハーフで、3年間海外の高校へ通っていた。そして進学と同時に日本へ帰ってきた訳だが、帰ってきたのは、筋肉もなくガリガリだったあの頃のあゆむ君ではなかった。
長身で高学歴で、天然ものの茶髪と青い瞳をもった、ただの英語ペラペラのハイスペック男となっていたのであった。
そんな彼と久々に再会した。彼が1人暮らしをしている私の部屋に遊びにいきたいと言ったからだ。私は勿論少年だったあゆむ君を想像して電話をしていたので、まさかこんなに男らしくなった彼がやってくるとは、本当に想定外のことであった。
昔と同じ細身だけど筋肉があるし、青い瞳も変わっていないのに、切れ長で男らしい瞳になった。
まるで美しい絵画を見るように、私はベッドに座っている彼を、ローテーブルに肘をかけて下から見つめていた。
「……椎(シイ)ちゃん、そろそろ見物料とるよ」
私の視線を全く気にしないように、日本の漫画を懐かしむように読んでいた彼が、漫画に目を向けながらそう忠告した。
私はその忠告をガン無視して、お酒を飲みながらじっと彼の顔を眺めていた。
美しい……。なるほど、ここまで美しいと逆に何も意識しないで済む。美大生の血が騒いだのか、私は完全に彼を美術品として見ていた。
「椎ちゃん、僕も喉が渇いた」
「はい、緑茶」
「えー」
「えーじゃないよ、まだ未成年でしょ」
「きっと僕の方がお酒強いよ」
「そういう問題じゃないの」
「ねえ気になってたけど、さっきから何描いてるの?」
「あゆむ君」
「うそ、ちゃんとイケメンに描いてよ」
「大丈夫言われなくとも元がいいから。補正する所なし」
「補正って……」
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