アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「衣都さんは俺がもらう、悪人と付き合ってるなんて衣都さんがかわいそうや!」
「嫌だねあげませんー、もう衣都は俺と結婚してますー」
お父さんの大人気なさは、娘である私も恥ずかしくなるほどだ。
「どうせ脅して無理矢理結婚したんだろ!」
「……お前意外と痛いとこつくな………確かに最初はそうだったけど……」
そういえばお父さんとお母さんが結婚した馴れ初めを、私はまだちゃんと聞いたことがない。
お父さんに聞いても嘘しか言わないし、お母さんに聞いても、お母さんバカだからどこからどこまでどうやって説明したらいいのか分からないと言う。
きっと色々あったのだろう。
まだ子供の私には分からない何かが。きっと。
「健太君、もう遅いから早く帰らないとお母さん心配しちゃうよ?」
「……こ、今度また衣都さんだけが店番の日に来ます!」
健太は相変わらずお母さんの言うことだけは素直に聞く。
彼はペコっと頭を下げると、走って店から出て行った。
残された私たち3人は、なんとも言えない空気の中健太を見送った。
「志貴の大人気なさには本当に呆れる……」
と、お母さんが白けた瞳でお父さんをにらんだ。
「だって、こっちは婚約指輪を断られて断られてやっと受け取ったかと思ったら返されて家出てかれて戻ってきてやっと結婚したんだぞ……なんであんな生まれたての子供に悪人呼ばわりされなきゃならんのだ……こっちの死ぬほどの苦労も知らずに……」
え……お父さん……嘘でしょ……そんなに頑張って頑張ってやっと結婚したの………。
なんかそれ聞くの娘として凄く切ないんだけど……。
そんな視線を送ると、お父さんは私の両耳を手で押さえた。もう遅いわ。全部聞いたわ。
「……ねえ、お父さんとお母さんはどうして結婚したの?」
そう質問すると、2人は目を合わせてから笑った。
「雪花にその質問をされるの3回目だなー」
「え、そうだっけ?」
「そうだよー、え、覚えてないの?」
お母さんが少し驚いたようにそう言う。
どうやら私はもっと昔に、同じ質問をしていたらしい。