アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「こら娘、重い。あと三十代の腰の弱さ舐めんな響いたわ」
「だって志貴が無視するからー」
「こらこらこら」
衣都が俺の背中に顔をグリグリと押し当て、足をバタバタとさせた。
俺はそんな衣都の腕をぐっとひっぱり自分の体を回転させて、衣都を腕の中にすっぽりとおさめた。
「なんだか余計なことを考え過ぎて疲れた……。もう寝るぞ衣都」
「えー、もう電気消すのー? はやい!」
「おじさんは体力無いんだよ……」
そう言って電気を消して、衣都のことを背中から包み込むようにぎゅっと抱きしめて目を閉じた。
「私うしろからぎゅってされるの凄く好き。安心する」
「……そうか。俺は衣都のこと抱っこして寝るのが好きだ。安心する」
「そうなの?」
「そうなの」
「ねえ志貴覚えてる? 私が幼稚園生の時もこんな風にうしろからぎゅってしてお昼寝してくれたことあったよね」
「え、そうだっけ?」
「そうだよー。私その時から志貴のこと好きだったから凄くドキドキしてた」
「あの時はしょっ中俺と結婚するする言ってたな」
「でも小学生になった途端他に好きな人できたよね私」
「とんだ小悪魔だったよお前はあの頃から……」
「でもずっと、志貴は私の理想の人だったよ」
「ぶ」
衣都が突然変なことを言うもんだから、俺は盛大に吹き出してしまった。
彼女は昔からこんな風に突拍子もないことを言って俺を驚かせることが多々あった。
驚かせるというより、振り回すというか……とにかく衣都は俺のことを転がすのが上手い。