アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「なんだ、何か欲しいものがあるのか……」
「志貴はいつも褒めるとそういうこと言うよね」
「自信無いんだよ! 誰かさんに振り回され過ぎたせいでな!」
「なんかそれ聞くと私悪女みたいっ」
「この小悪魔めっ」
「ぎゃーやめて苦しいー」
後ろから軽く羽交い締めにすると、衣都は苦しがってるのにきゃっきゃと楽しそうに笑った。なんだこいつ可愛いな。
「志貴はそんなこと言うけど、実際私の方が志貴への片思い期間長いんだからね」
「幼稚園の頃の好きは本気じゃないだろーが」
そう悪態をつくと、衣都がくるっと振り返って、ちゅっとキスをしてきた。
「幼稚園生なりに本気だったよ?」
「……………」
………本当にこいつは………。
俺を転がす方法を、本能的に心得ている。
俺は黙って衣都を強引にもう一度振り向かせて、深い深いキスをした。
ーーーー俺の世界一大切な幼馴染み。
まさかこんなに小悪魔に育つとは、あの頃は思ってもみなかった。
結婚してもきっと、転がされ続けるのであろう……容易にそのことが想像できて、少しため息が出るが、彼女に転がされるのはそんなに悪い気はしない。そう思ってしまうのは、相当ハマってしまっている証拠だろうか。
とりあえず今は、彼女と同じ名字になる日が、正直死ぬほど待ち遠しい。
小悪魔な彼女
end