アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
彼女のその、女の嫉妬まみれの視線に、私はなんて言ったらいいのか分からなくなってしまった。こんな視線を浴びたのは、初めてじゃ無いけど、身が震えた。
「……あ」
ーーーーーーと、その時、のれんがゆっくりと捲れ、珍しくスーツ姿の志貴が、少し疲れた様子で姿を現した。予定では明日帰ってくるはずだったのに。
志貴は、困り果てた様子の私と中本さんを見て、何かトラブルがあったと思ったのか、私たちを一瞥しただけで、すぐにお客様ーーー癒し系美女に声をかけた。
「お客様、何かお探しですか?」
「え…………あっ、志貴君!!」
「梨乃……?」
「わあ〜、久しぶり〜! あっ、これお土産!」
振り返り志貴がいたことに彼女はかなり驚いている様子だったが、たちまち目を輝かせ、一度私に渡したお土産を私から引ったくり志貴に渡した。
その行動に驚いていると、彼女はさらに驚くべき行動をとった。
彼女は私の目の前で志貴の腕を掴んで、上目遣いで話し始めたのだ。
「どうしたんだ、急に……結婚して東京で暮らしてたんじゃないのか?」
「旦那全然家にいないんだもん、今出張中でつまんなくて、実家に帰ってきたついでに、志貴君の顔見たくなって来ちゃった」
「玉の輿のお気楽主婦とか、生まれ変わったらお前になりたいわ本当」
「お茶出してよー」
「そういうこと自分から言うんじゃありません。ていうか俺も既婚者だから。離れなさい」
「元カノにそういう冷たい態度とるー?」
「ごめん、衣都、お茶頼んでいいか。飲ませたらすぐ追い出す」
志貴が帰ってきて、やっと志貴が私の目をちゃんと見て話しかけてくれた。
一週間いなかったから、それなりに寂しかった。だけどただいまはおろか、元カノの梨乃さんに先に話しかけて、殆ど抱きつくみたいな形で話してる。
妻として面白い訳が無い。