アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]


「そんな言い方してるよ! 回りくどいだけで!」

「お前…、いつからそんなズバズバ言う妹になったんだ…」

「第一かんちゃん私無しで生きていけるの!? 無理だよだってかんちゃん私のこと好きすぎるもんバカじゃないの!?」

「なっ…」

「最悪恋人になるのは諦めてもいいよ……、でも諦めなきゃいけないところまできたら、諦めたい。まだわかりもしないことを不安に思って、勝手に終わらせるのは嫌だよ」

「……」

「広い世界っていうのは、そういうことじゃないの…? 諦めて世界を狭くすることの方が、私はよっぽど窮屈だよ…っ」

「……泣くなよ……」


かんちゃんの綺麗な指が、私の涙をすくった。

困った顔してるなあ、かんちゃん。


でも、これが本音だもん。

覚悟を決めた私の、本音だもん。


かんちゃんは、涙をすくってから、本当に泣いてる、と呟いて少し笑った。

それから、初めてキスをした。



「……ねえ今、どんな顔してるか分かる?」

「うーーん…、ぽかん顔?」

「違うよ! 怒り顔だよ!」

「えっなんで」

「知らないよ!」

「なんだよお前情緒不安定かよっ」



ーーーー私はやっぱり、彼の言う広い世界っていうのが、あまりピンとこないよ。


彼の望む私の生き方は、私の幸せとはあまりにかけ離れてる。

この先、どうしても諦めなければならない状況になるまで、その時まで、私はあなたと一緒にいたいよ。

その願いは、わがままかな?

ここで離れておいた方が良かったと、後悔する日が来るのかな?


でも私は、そんなことないと思う。

彼が、たとえ私の笑顔を忘れても、

私のダサいくまのコップの柄を忘れても、



あなたの瞼の中の世界だけじゃなくて、こうして触れられる距離に私がいたことに意味があったと、


そう、思える日が、くると。



「またオレンジジュース?」



氷の音を聞いて、

そう言って微笑むあなたが、

私の未来の中に、いますように。

この先ずっと、いますように。





今はただ、そう願って、キスをしよう。








end
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