アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
……そうして、やっと嵐のような1日が終わった。
返却された着物の片付けをする頃、私は役目を終えても片付けを手伝ってくれた梨乃さんにお礼を言いに向かった。
「梨乃さん! 今日は本当にありがとうございました。助かりました」
「いいのよ、志貴の為だから、志貴には沢山借りがあるし」
彼女はそう言うと、マロンブラウンの髪をかきあげた。志貴は今下で静枝さんと片付けをしている。
借りがある……?
なんだか意味深な言い方に、私は思わず眉を顰めた。そんな私を見て、彼女は楽しむようにこう問いかけてきた。
「志貴、優しいでしょう」
「え……」
「大学時代から志貴は本当に誰にでも優しくて、頭も良くて、紳士で、色んな女の子に好かれてた」
「………」
「完璧過ぎて、釣り合ってない気がして、私は別れちゃったけど……そんな彼が一生を添い遂げたいと思えるような女性って、一体どんな人だろうってずっと思ってた」
そう言って、私の目をじっと見つめる梨乃さん。額に嫌な汗が滲んだ。怖かった。
思わず一歩後ずさりした。すると、誰かが上にあがってくる音が聞こえた。……志貴だった。
「梨乃、今日は本当に助かった、ありがとう、実家まで送ってくよ」
「志貴、いいのにそんな」
「いいから行くぞ、あと何か食べたいものあるか?」
「えー、そんな急に言われても……」
「無いんだったら、俺の知り合いが店主の寿司屋でもいいか。さっき電話したら、席も空いてるらしいから」
「やったー! お寿司大好き!」
「車もってくるから、ここで待ってろ。衣都、中本さんと父さん母さんと4人で片付けの続き頼んだ」