アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
やっと私の名前を志貴が呼んで、私はハッとした。殆ど聞いてなかったのに返事をした。
梨乃さんに食事をご馳走するくらい当然だ。それなのに、胸の中がすごくすごくモヤモヤする。
そんな私の気持ちに気付いているのは、この場では梨乃さんだけだった。
彼女は、また何かに勝ち誇ったような笑みを浮かべて、志貴の腕をさすった。
「ごめんね、旦那さん、ちょっと借りるね」
今割り箸20本くらいなら余裕でバッキバキに折れる自信がある。
私は、無事店の片付けを終えて、お風呂にも入って部屋着に着替えて、一人酒をして布団にダイブしていた。
お酒を飲まないと、今もまだ志貴が帰ってこないことにたいする怒りを静められそうになかったから。
もし私が高校生だったのなら、こういう嫉妬は可愛いねで済まされるかもしれない。
でも私ももう大人だ。しかも既婚者だ。こんなしょうもないことで拗ねて旦那を疲れさせるなんて、そんなことしたら益々「 まだまだ小娘だ」って、思われてしまう。
でも、さすがにここまでくるといよいよ自信がなくなってくる。
だって、私が志貴に釣り合ういい女だったのなら、こんなに嫉妬を孕んだ瞳を向けられることは無いもの。
なんでこんな子が、って、思われてるから、こんなに嫉妬されるんだ。
「っ……」
ーーー結婚したからなんだっていうの。
全然安心できない。不安定な恋愛。
もう結婚したら「恋愛」っていうのは、少し違う表現なのかもしれない。結婚って言うのは、家族になることで、もっと安心感のある愛に満ち溢れた関係を言うのだと思ってた。
だけど、私はまだまだ志貴に恋をしている状態だ。
好きで好きで仕方ない。志貴の行動一つ一つに一喜一憂してしまう。
はやく、帰ってきてよ、志貴。