アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「………衣都、寝たのか?」
すっと障子が開いて、志貴の声が聞こえた。
私はなんだが一回で返事をすることが悔しくて、無視をした。
すると、女の人の声が聞こえた。
「まあ……衣都ちゃんが好きそうなシュークリームせっかく買ってきたのに……」
ーーーーそれは、梨乃さんではなく、美鈴さんの声だった。
久々に聞く彼女の声と、なぜ2人が一緒にいるのかということに、私はドキドキしていた。
暫くして靴が砂利とこすれ合う音が聞こえて、志貴も庭先に降りたのだと理解した。
庭から聞こえてくる声に、私はそっと耳を傾けた。
「悪い人ね、奥さんがいるのに他の女性と2人きりでいるなんて。見かけた時びっくりしたわ」
「俺もまさかお店で会うとは……。それに2人きりも何も、仕事のお礼にですし…」
「新婚なんでしょう? 少なからずあんなにあなたに対してあからさまに女をアピールしてくる彼女と、しかも元カノと2人きりなんて、いくら仕事でも衣都ちゃんは面白くないはずよ」
「アピールって……あっちも結婚してるんですよ?」
「あなたのそういう隙が、衣都ちゃんを不安にさせてることに気付けないの?」
「え……」
「相手が衣都ちゃんだから、私は諦めたんですよ? その辺分かってます? なんだかあっちは昔から志貴さんのことを知ってますみたいな雰囲気出してましたけど、衣都ちゃんは生まれた時から志貴さんのそばにいたんですよ?」
「なんか……美鈴さん雰囲気変わりましたね……」
「そうかしら。だってあまりに癇に障ったんだもの」