アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
美鈴さんの、ちいさな笑い声が聞こえた。
私は、美鈴さんの言葉に、かなり胸がじんとしてしまった。
相手が私だったから諦めた……それはつまり、私が志貴にふさわしいということ?
そんなこと、初めて言われた。
でも、私はきっと誰かに、そう言って欲しくて、ずっと不安だったんだ。
誰かに、お似合いだと、言って欲しかったんだ。
美鈴さんとは、かなり色々あったけど、私は単純でバカだから、もう今すぐに彼女の手を取って私が言いたいこと全部志貴にぶつけてくれてありがとう、と頭を下げたい気持ちになった。
「……起こしたらまずいから、もう帰るわね。衣都ちゃんに、よろしくね」
その言葉を最後に、美鈴さんの声が遠ざかって行った。
私は、ぎゅっと布団の中に身を潜めて、嬉しい気持ちをなんとか押さえつけていた。
初めて志貴のお嫁さんとして、認めてもらえたような、そんな気がした。
………すっと、障子が開く音がした。
五郎が1度小さく鳴いた。
美鈴さんの言葉が嬉しくて泣いてるなんて、そんなところ志貴に見られるわけにはいかない。
私は必死に寝たふりをしたが、志貴がゆっくりと布団をめくって、私の髪を撫でた。
「……もしかして、不安にさせてたか……?」
……やめて。今優しい言葉をかけられると、全然悲しくなんかないのに、なんだか涙が出てくるよ。
志貴は、少しだけ肩を震わせている私に気づいたのか、彼は私の少し濡れたまつげを指で触って、私が泣いていることを確かめた。
彼は、自分が泣かせてしまったと勘違いしたのか、相当焦っていたと思う。
志貴は、そのまま私に覆いかぶさるようにぎゅっと私を抱きしめて、ごめんな、と囁いた。
今は志貴に泣かされたわけじゃないんだけど……。
そう思いつつも、なんだか焦ってる彼がおかしくて、梨乃さんにちゃんと私を紹介しなかったこともあるし、まあちょっとした戒めとして、暫くこのまま泣いた理由を誤解させておこうと決めた。