アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
紺色のあなたのマフラーに、いくつもの涙のあとができる。
「雪が、俺の顔もう見たくないっていうんなら、通学路変えたって構わない」
ただ降ってくる言葉が、切ない。
「雪が、もう俺の声聞きたくないっていうなら、教室では一言も声出さないようにしたって構わない」
あなたが泣いている。
「構わないんだ、もう…」
ずっと笑っていたあなたが、泣いている。
「ごめん、雪、ごめん、俺、雪のことが好きなんだ」
あなたに初めて好きと言われたのが、なぜ別れたあとなのだろう。
触れたくない過去のひとつひとつが、蘇り始めていた。
「紺野くん」
「ごめん、それだけ、伝えたかったんです…」
「私、紺野くんが嫌いだよ」
「…うん」
「大嫌いだ」
「うん」
「でも、そのマフラーをしてる紺野くんは、好きだよ」
「…っ」
本当は知ってた。
紺野くんはいつも、私があげたマフラーを毎日つけていたこと。女の子は変わっても、それだけは変わらなかった。
本当は知ってたの。
「…ごめんなさい。もっと大事にします。死ぬほど大事にします。だから、来年の冬も、これからずっと、このマフラー使ってもいいですか…っ」
「っ」
あなたは、
あなたは、
あなたは、
なんて、罪な人。
涙で濡れたマフラーに、あなたは顔を深く埋める。
景色が、涙で歪む。
「次は、大事にしてくれる?」
そう言ったら、
君は泣きながら、紺色のマフラーの中で、何度も強く頷いた。
end