アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
一応名前で呼ぶようにはなったが、雪は彼女とはっきり言えない存在だった。
なぜなら、俺は今まで通り女関係がだらしないままだったから。
雪と遊べなかったら、他の子と遊ぶ。穴埋めの繰り返し。
一つ変わったことと言えば、他の子とキスをしなくなったということ。
それだけだ。
それでも雪は、ずっと俺についてきてくれた。
…罪悪感で胸が痛かった。
俺は、その痛みを振り切るように、雪意外の女の子と遊んだ。
付き合ってすぐに、雪がくれたマフラーをつけたまま。
他の子と遊んでも、いつも頭の中には雪がいた。
「雪、今日一緒帰れる?」
でも、その日は突然やって来た。
「あー…、うん。ちょっとした用事あるんだけど…、もしあれだったら他の子と」
「いいよ。それくらい待ってる」
「あ、本当?じゃあ、また下駄箱で」
他の子と、なんて悲しい台詞を雪に言わせて、彼女にこんなこと言わせて、俺何やってるんだろう。
―――雪が可哀相だ。
あの時俺があんな提案しなければ、雪は。
あの時、弱ってた俺に雪が会わなければ、今頃。
それでも雪を手放せない俺は、何なんだろう。
“ひろ、好きだよ。もう一度信じて、ひろ、私ひろじゃなきゃっ…“
“本当期待ハズレ。ていうかあっちも本気じゃないでしょ。え?本気だったらどうするかって?ありえな、まじそんなんだったら超寒いよねー“
“ひろ、好きだよ“
“信じてひろ“
…本気で付き合ったら、傷付くのは自分。
「あれ、ひろじゃーん、久しぶり」
愛するより愛される方が楽だし傷付かない。
「下駄箱で一人なんて、あ、だれか待ってるの?」
ほら、別れても、こんな風に本人は、笑って話し掛けてくる。
「愛美…」
「あ、彼女作ったんだっけ?」
できたんじゃなくて、作ったと聞く所が彼女らしい。
「三坂さんだっけ?ひろ本当は清楚系好きだもんねー」
「お前と違ってな」
「ひっどー。ていうかひろ、やり直さない?退屈でしょあの子じゃ」
「……お前俺と別れてから本性隠さなくなったよな」
「ねぇ、今の話聞いてた?」
「聞いてねぇよ」
「ひろ、好きだよ」
「っ、待っ…」