アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
私の発言に、彼は小さく笑った。
そんな彼に合わせるように、私も笑いながら鉛筆を走らせた。
「椎ちゃんは、どこを描くのが1番好きなの?」
「唇」
「わお、エロい」
「何を言ってるのかわからない」
「もっと近くで見なくていいの?」
「……」
そう言って、彼がするりとベッドから降りて、私の隣にピタリと密着した。
私はちょっと緊張しながらも、有難く彼の顔を近くで見させてもらった。
「触った方がわかりやすいって言うよね。芸術家の人って」
「そうだねそういう人もいるねでも私は大丈夫ありがとう」
「日本語久々過ぎて上手く聞き取れなかった」
「都合のいい耳だな……」
「ねえ、この指輪、なに?」
突然、彼の声色が変わって、背筋がぞくりとした。
彼のピアニストよりも長い指が、私の小指をなぞった。
「なにって…ただのピンキーリングだよ…」
「自分で買ったの?」
「そうだよ」
「へえ」
「……なんか、ちょっと、離れて」
「……なんで?」
「なんか今一瞬……」
「オスの匂いがした?」
「………う、うーん……」
「中々勘が鋭いね」