アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
久々に雪をちゃんと見て、切なくて呼吸が苦しくなった。
「あ、女の子紹介してとか?」
雪は、かなり動揺した様子で、話し続けた。
「それとも、もしや私と同じアパートに新しい彼女がいるとか」
こんなこと言わせるつもりじゃなかった。
雪は、今どんな思いで話しているかなんて、想像しただけで胸が裂けそうだった。
雪の肩が震えてる。
雪の声が震えてる。
今すぐにでも抱きしめたい。
ごめん、雪。
「ごめん…」
俺はずっと、愛される人になりたかったんだ。
「…な、なんで今更、そんなこと言うの…っ?」
「ごめん」
無条件で、愛される人になりたかったんだ。
「ずっと、苦しかったのにっ…」
愛することが怖かったから。
「雪が、俺の顔もう見たくないっていうんなら、通学路変えたって構わない」
だけど本当は、誰かに本気で愛されれば、
「雪が、もう俺の声聞きたくないっていうなら、教室では一言も声出さないようにしたって構わない」
いつかトラウマを克服して、その人を本気で愛したいって、思っていた。
「ごめん、雪、ごめん、俺、雪のことが好きなんだ」
それが雪だったのに、大切にできなかった。
「紺野くん」
「ごめん、それだけ、伝えたかったんです…」
――――もう手遅れでもよかったんだ。
「私、紺野くんが嫌いだよ」
「…うん」
叶わなくてもいい。
「大嫌いだ」
「うん」
恨まれてもいい。
「でも、そのマフラーをしてる紺野くんは、好きだよ」
「っ…」
ただ君を、本気で愛する資格が欲しかった。