アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
それでも、いいよ。
あなたはわたしの心まではいらないと言った。
返してあげられないから、って。
それでもいい。
それでも、いいよ。
だから。
「今日はやめとく」
「え」
「服、着せるから、腕」
「わ」
世間でこんな関係知れたら、大変だ。
いわゆるそれだけが目的の、汚れた関係。
でもあたしは、汚れたなんて思ってない。
好きな人に触れられることが、汚れになるわけない。
「どうしたの?」
「さっきラーメン食べたら、欲満たされた」
「簡単な精神構造だね」
「はは、確かに」
わたしの価値は、あなたが満たされたか、満たされていないかで決まる。
わたしが補うんだ。
あなたの欲を。
「水畑、最近痩せた?」
「誰かさんのせいデスー」
「うわ、お前めっちゃタラちゃんの物まね上手いな」
「でしょ。これウケいいんだよね」
「ははっ」
わたしは、ただのおもちゃなんだろう。
あなたにとって、ただの。
もしかしたら、わたし以外にもおもちゃがいるかもしれない。
あなたの欲を満たす役目さえ、独占できないのかもしれない。
それでもいいと、一体どうして思ってしまうんだろう。
「水畑は、面白いな、まじで」
「本当?」