アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
「上条っ」
「やだ。水畑が欲しい」
「わたしさっき、何話してたか分かってる…っ?」
「分かってる」
「分かってないよバカ、もうやだ、辛いんだって…っ」
「分かってる。でも今、キス以外に水畑が愛しい気持ち、表す方法が見つからない」
「え」
「見つからないんだっ…、」
それって、どういう意味?
ねぇ、そんなこと言われたら私、期待しちゃうよ。
ねぇ、私、あなたに心も捧げていいの?
私の震えた手を、あなたの震えた手が握りしめた。
シーツに、透明な染みが二人分。
悲しみが、雫になって、ぽたりと落ちる。
「上条…」
「ん」
「なんで泣いてるの…?」
「うん、なんでだろうな」
「……」
「欲なんて、お前と話せば、一緒にいれば、それだけで満たされてたのに…っ」
―――あなたはわたしの心まではいらないと言った。
返してあげられないから、って。
それでもいい。
それでも、いいと、思っていた。
けど、全然大丈夫じゃなかったんだね。
当たり前だ。
気持ちに温度が無かったら、抱きしめられても温かくないから。
「上条」
そっと、あなたの胸に頬を寄せた。
あなたは、迷わずあたしの肩ごと抱きしめて、
それから、
消え入りそうな小さな声で、
あったかいな、と言って、私の耳のすぐそばで、小さく笑ったんだ。
end