アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]



あれから一週間、私は一度も図書館に行っていない。

先輩のことも、見ていない。

私は、とにかく先輩を早く忘れたくて、忘れられないって分かってるのに、合コンの誘いに初めてのった。

そして今、私は初めて先輩じゃないの男の人の隣に座ってる。

「蓮見なにちゃん?」

「あ、蓮見でいいですよ」

「えー、なんでなんで、名前呼ばせてよ」

「あはは、名前嫌いで、すみません」

「あ、そうなの?いるよねたまにそういう子ー」

なんとなく、名前を呼ばれたくなくて、嘘をついた。

落ち着かない。気持ち悪い。

先輩じゃない男の人が、怖い。

先輩じゃないと無理だよ。

先輩を忘れるために来たのに、どんどん先輩が恋しくなってくる。

もう嫌だな。

苦しいよ。

「そういえばあいつまだ来ねぇーのかよー、蓮見ちゃん来るって言ったら行くって即答した奴がいるんだけどー…って、蓮見ちゃん?」

「…っ」

「どうしたの?大丈夫?」

「っ、あ」

「なんか熱っぽくない?」


やだ、怖い、触らないで。

触らないで。

先輩、先輩、先輩、助けて。

私やっぱり、先輩じゃないと無理だよ。


「香苗」

「へ」

「あんまり香苗に触らないで」

「あ、吉川お前来て早々お持ち帰りかよっ?」

「うん」

「は!?おま、本気…?」

―――何が起きたのか分からない。

ただ、いつもページをめくるためにあったあの手が、私を引っ張ていく。

< 32 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop