アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]
あれから一週間、私は一度も図書館に行っていない。
先輩のことも、見ていない。
私は、とにかく先輩を早く忘れたくて、忘れられないって分かってるのに、合コンの誘いに初めてのった。
そして今、私は初めて先輩じゃないの男の人の隣に座ってる。
「蓮見なにちゃん?」
「あ、蓮見でいいですよ」
「えー、なんでなんで、名前呼ばせてよ」
「あはは、名前嫌いで、すみません」
「あ、そうなの?いるよねたまにそういう子ー」
なんとなく、名前を呼ばれたくなくて、嘘をついた。
落ち着かない。気持ち悪い。
先輩じゃない男の人が、怖い。
先輩じゃないと無理だよ。
先輩を忘れるために来たのに、どんどん先輩が恋しくなってくる。
もう嫌だな。
苦しいよ。
「そういえばあいつまだ来ねぇーのかよー、蓮見ちゃん来るって言ったら行くって即答した奴がいるんだけどー…って、蓮見ちゃん?」
「…っ」
「どうしたの?大丈夫?」
「っ、あ」
「なんか熱っぽくない?」
やだ、怖い、触らないで。
触らないで。
先輩、先輩、先輩、助けて。
私やっぱり、先輩じゃないと無理だよ。
「香苗」
「へ」
「あんまり香苗に触らないで」
「あ、吉川お前来て早々お持ち帰りかよっ?」
「うん」
「は!?おま、本気…?」
―――何が起きたのか分からない。
ただ、いつもページをめくるためにあったあの手が、私を引っ張ていく。